小松には、美食家をうならせる名店が数多くあります。そんなお店を一軒ずつご紹介する【こまつ美食帖】。今回は、旬の食材を五感を使って楽しむ「ワインと創作ごはん Trenta（トレンタ）」です。

小松駅から徒歩3分「ワインと創作ごはん トレンタ」

JR小松駅西口からまっすぐ伸びるれんが通り沿いの「ワインと創作ごはん Trenta（トレンタ）」。美味しい食事とカウンター越しの会話も楽しめる、大人のお店です。

オープンは2022年11月。イタリアンをベースに、旬の食材を洋でも和でも美味しくアレンジ。メニューにはない料理も飛び出すので、今日は何があるんだろう？と通う常連さんも多いんだとか。

どれも素材の味を最大限に生かし、できるだけシンプルに、繊細な味わいを楽しみます。美食の本質を追求する姿勢に、ワクワクも止まりません！

オーナーの島村知宏（しまむらともひろ）さんは小松市出身。大阪の専門学校で和洋中とオールラウンドに料理を学び、イタリアンのシェフに。その後イタリアに渡り、5年間、新鮮な食材であふれるシチリア島などで修業を積みました。

日本食ブームもあり、現地では日本の食材を使ったメニューを任されるなど、イタリアンの枠を超えた料理を提供していた島村さん。目の前にある食材をいかに美味しく食べてもらうか。ジャンルにこだわらない姿勢はイタリアで育まれたといいます。

★石川の冬といえばカニ！〈香箱ガニのカニ酢〉

そんな島村さんのおすすめの冬の料理はこちら！〈香箱ガニのカニ酢〉です。おお、「和」ですね。しかもスタイリッシュ！

11月にズワイガニ漁が解禁になり、カニに沸く石川。地元の人たちが好むのは、漁期も短く今しか食べられないメスのズワイガニ「香箱ガニ」です。

細身ながらも身の詰まった脚、そして濃厚な内子に、外子のプチプチ。それらをミルフィーユ状に仕立てたのがこの一品。旨味たっぷりの層が、口の中で溶け合います。柑橘系のマイルドな酢を使うことで、カニの味を引き立てているそう。たまりません！

★日本とイタリアのいいとこ取り！〈りんごとミントとしめ鯖〉

そしてこちらも冬の定番、〈りんごとミントとしめ鯖〉です。イタリアで青魚を食べるときには、爽やかなりんごとミントを使って生臭さを消すのが王道とのこと。それを見事にアレンジ、しめ鯖をさっぱりとフルーティーにいただきます。

ミントがほんのり香り、シャキシャキりんごが新食感のマリネ。シンプルだからこそ、それぞれの食材の持つ風味がしっかり感じられる一皿です。

★まるでアミューズメント！豪快な〈牛もも藁焼き〉

もう一つ、お店の定番かつ鉄板メニューだという〈牛もも藁焼き 生七味あえ 卵黄ソース〉もご紹介しちゃいます。

モモ肉の中でも柔らかく脂がほどよい、イチボやランプを使っています。大きな塊を仕入れ、丁寧に処理。そして、島村さんがブレンドした【生七味】で下味をつけます。味噌をベースに、胡麻や山椒、ゆず、海苔など和の風味で奥行きのある味に。

オーブンで中心部までゆっくり火を入れた後、藁焼きで豪快に仕上げます。轟々と燃える炎に圧倒。一気に表面を焦がしてカリッとさせ、藁の香りを肉に閉じ込めます。五感でフルに楽しめる料理です。

他にも、地元で獲れた〈猪のパスタ〉や、チーズと胡椒の〈カチョエペペリゾット〉などイタリアンなメニューもありますよ。野菜と魚介を優しく味わう〈ポタージュ〉はその日の仕入れのお楽しみ。

お酒もワインに限らず、焼酎やジンなどいろいろあるので、料理に合わせてペアリングするのもおすすめです。

小松にUターンして店を構えた島村さんに、オープンした経緯や、小松の魅力などを聞いてみました。

Q. どうして小松で店を出されたんですか？

「小松に戻ってきたかった」というのが一番の理由です。県外のいろんな都市や海外にも行きましたけど、小松駅に着くとホッとして「あー、小松帰ってきたー、これこれ、この雰囲気」ってなるんです（笑）。

僕の周りには小松好きな男性が多くて、ずっと小松に住み続けている人もいれば、僕のように他で暮らしていても「いつか帰って来る」って言っている人もいます。小松って僕たちの「大きい家」みたいな感じ。とても居心地がいいんですよね。

ここはもともと両親が営む婦人服店「カネセン」だったんですが、僕が戻ってくるということで1階を飲食店に改装しました。「カネセン」は2階に移り、その横に妻がヘッドスパ＆カラーサロン「Junne（ジュネ）」をオープンしました。家族みんながそれぞれの店を営業しています。

Q. 小松でよく行く場所はありますか？

安宅ですかね。釣りや、神社をめぐるのが好きなので。海に沈む夕日も綺麗ですし、波の音も気持ちよくておすすめのスポットです。自然が好きなので、休みの日は山の方へドライブに行くこともよくあります。

イタリアではオンオフを切り替えて、プライベートの時間を大切にしなさいとよく言われました。楽しく仕事をするためにもオフの大切さを改めて感じていて、休みの日は頭を空っぽにして無の状態にするようにしています。自然が豊かで、リセットできる場所が近くにあるのが、小松の良さでもありますね。

Q. 小松での暮らしはどうですか？

店に立つのはとても楽しいです。カウンター越しにいろんな人と話をして、新しい何かが生まれることもあります。料理も生き方も、好奇心が原動力。狩猟免許もとりました。空港も近いですし、小松を拠点にしながら、海外と行ったり来たりして暮らすのもいいなと思っています。１度きりの人生を楽しみたいです。

【お店の基本情報】

島村さんの自由な感性で創作料理を提供する「トレンタ」。美味しいものを食べて、弾む話に元気をチャージ。小松の居心地の良さを体感できる素敵なお店です。

（取材は2024年11月）