【小松・滝ヶ原】豊かで心地よい暮らし、これからの〈村〉のかたち
みなさん、こんにちは。小松の山間に、地元はもちろん世界各国からいろんな人が訪れて思い思いのゆったりとした時間を楽しむ…。そんな場所があるのをご存知でしょうか?
それは自分自身が居心地よくいられる「自由」を体感できる場所であり、さまざまな人がゆるやかにつながるこれからの〈村〉のかたちでもあるかもしれません。農場にカフェ、ホステルのほか、文化体験やイベント、音楽フェスなども楽しめる、盛りだくさんな交流拠点「滝ヶ原ビレッジ」についてご紹介します!
日本遺産のまち、小松・滝ヶ原
さて、小松市には2つの日本遺産があります。安宅エリアの「北前船の船主集落」、そして弥生時代から始まったとされる「石の文化」です。小松は良質な石材が採れた地域で、その産出地のひとつが、滝ヶ原町。小松空港から車で25分ほど、JR加賀温泉駅からは15分、山間にたたずむ静かなまちです。
道路からも見える「西山石切場跡」や、現在も切り出しを続ける「本山石切丁場」をはじめ、最盛期には町内12ヶ所に石切場があったといいます。
産出される「滝ヶ原石」は硬く良質な凝灰岩で、金沢城や小松城の石垣に使われたほか、鳥居や灯籠、墓石用に関西や北海道まで運ばれていました。
また、まちのあちこちには、明治後期から昭和初期にかけて建設されたアーチ型の橋が。現存する石橋は全国的にも少ないうえ、狭い地域に5つも残っていることは珍しく、とても貴重なものなんだそう。
廃校になった小学校を活用した「里山自然学校こまつ滝ヶ原」では、滝ヶ原の石文化をめぐるガイドツアーも受け付けているので、地元の方に案内してもらいながら、緑いっぱいの中をウォーキングするのもおすすめです。
農を楽しむ暮らしを実践「滝ヶ原ファーム」
さて、そんな「石の里」滝ヶ原に、2016年に誕生したのが「滝ヶ原ファーム」。自然農法とともにある豊かな暮らしを実践する場です。現在は、古民家を改修してできたさまざまな施設があり「TAKIGAHARA Village(滝ヶ原ビレッジ)」と総称されています。
暮らしているのは、ほとんどが首都圏など他地域からの移住の方。中には海外からの長期滞在の運営メンバーもいて、ここが日本の山里であることを忘れてしまうようなインターナショナルな空間になっています。
金沢や加賀などから通うスタッフもいますが、住み込みの常駐メンバーは7人ほど。そのうちの1人、キラキラした目が印象的なアコさんに施設を案内してもらいました。
佐賀県出身で東京に住んでいたアコさんは、昨年6月から滝ヶ原で暮らすことに。ここでは主に養鶏を任され、畑で野菜を作ったり、カフェなどのお手伝いをしたり、忙しい毎日を送っています。
▼人間と動物が共生する農業
アコさんが世話をする鶏たちの住む小屋はまるでアート作品。早稲田大学の学生や海外の建築家が作ったものだそうで、遠くからも目を引きます。この広々とした養鶏場に約30羽の鶏たちが暮らしています。
山間のためテンやイタチなどの天敵もいますが、柵を高く二重にしたり、地面は石を混ぜることで侵入されにくい工夫をしています。自然の暮らしには厳しさもあるということを知るのも学び。だからこそ「生きる尊さ」を感じることができるのかもしれません。
鶏たちを育てる上で実践しているのが、循環型の養鶏です。飼料は手作り。米糠や酒粕、おからなど地元の食品メーカーの廃棄物を提供してもらうことで、ゴミを減らす取り組みにもつながっています。
そして、カフェなどで出る野菜のくずや食べ残しは、養鶏場に撒いて餌に。鶏たちが残した分は天然の肥料となります。ミミズが増え、それを鶏たちが食べて元気になる。全てがつながり一緒に生きている〈共生社会〉です。
▼耕作放棄地を畑に
養鶏のほか、荒地を耕して畑を作ったアコさん。サニーレタスやとうもろこしなどさまざまな野菜を育てています。雨水を溜めて使ったり、鶏たちの糞を肥料として畑にまいたり、こちらもしっかり循環型。
地域の方に農業について教えてもらいながら、自分でアレンジして効率のいい農法を考えるアコさん。スイカを狙う動物たちから実を守るために、空中で育ててみようとハンモック栽培に挑戦。チャレンジ精神を活かした自由なスタイルで農業に臨んでいます。
当初1年限定のつもりで滝ヶ原に来たというアコさん。田植えなどを手伝うなど地域の人たちと交流するうちに、居心地が良くなってしまい滞在延長を決めたそう。今年は画業にも力を入れて、個展も開くそうです。滝ヶ原の生活が作品にどう表れてくるのか、楽しみです!
交流拠点のカフェ&ホステル
滝ヶ原ファームで採れた野菜や卵は、併設するカフェなどでも食べることができます。まさしく地産地消。イベントなども定期的に開催され、いろんな人たちが集まり楽しみながら「滝ヶ原ビレッジ」のコンセプトに触れることができます。
▼滝ヶ原カフェ
築100年の古民家をリノベーションして、2016年にオープンしたのがこの「TAKIGAHARA CAFE(滝ヶ原カフェ)」。大きなガラス面に、高い吹き抜け。広々とした開放的なカフェです。
そば粉のガレットが名物ですが、滞在するゲストスタッフによる飛び入りメニューがあることも。食材はファームで生産する新鮮な野菜をはじめ、ジビエなどの地物などを使っています。体も心も元気になっちゃいます。
▼滝ヶ原クラフト&ステイ
2020年からはホステル業も。「TAKIGAHARA CRAFT&STAY(滝ヶ原クラフト&ステイ)」では、古民家とデザイン家具が調和した上品なリラックス空間を提供しています。家具にこだわるのは、「いい空間にいい人が集まり、いい時間が生まれる」というオーナーの信条に基づくもの。
2階が宿泊スペースとなっていて、個室が2つとドミトリーで構成されています。空間デザインはもちろんのこと、音楽やファッション、アートといった文化そのものを大切にしていて、1階ではスタッフやゲストと交流しながらも思い思いの時間を楽しめます。
▼滝ヶ原ハウス
こちらは1棟貸しの農泊施設「TAKIGAHARA HOUSE(滝ヶ原ハウス)」。2階建で、キッチンとリビング、バスルームを備えています。4人まで宿泊可能。石蔵を改装したベッドルームでの滞在は、石の里・滝ヶ原らしいステイかもしれません。
▼滝ヶ原マーケット
「滝ヶ原クラフト&ステイ」をメイン会場に、今年から毎月第一土曜に定期的に開いているのが「滝ヶ原マーケット」。
この日は約13ブース。ピロシキなどの飲食をはじめ、レコード、洋服、メガネなどのコーナーや、クレヨン作り、アロマオイルなどのワークショップなども開かれました。
子どもたちの姿が多いのも新鮮。ワークショップに参加したり、大きなソファでごろごろしたり、皆がのびのびと自由に楽しんでいます。
▼滝ヶ原クラフトツーリズム
そして今年から始まったもうひとつの取り組みが「クラフトツーリズム」です。毎月第3土曜に1泊2日で開かれる、伝統工芸の体験と、自然の恵みたっぷりの食、そしてステイを楽しむツアーです。
体験できる工芸は、漆器、和紙、九谷焼を月替わりで。例えば「漆器コース」は、山中漆器の挽物木地師である生地史子さんが担当。参加者は素地を作るところから、漆塗り、蒔絵などを施して、自分の作品を作り上げます。
滝ヶ原に宿泊するほか、加賀温泉の滞在もOK。海外の方を中心に日本の文化を体験したいという人たちが参加しているそうです。
まとめ、そして〈フェス〉
小松市の滝ヶ原には、日本全国にとどまらず世界各国からの老若男女で賑わう、ゆったりとした時間が過ごせる場所があります。一見何にもないように見えて、でも少し車で走れば何でもそろい、豊かな生活ができる場所。そしてさまざまな人たちが訪れたくなる、ふれあいの場所。
管理人の小川諒さんは、新しい形の村づくりという意味で「ビレッジング〈Village+ing〉」をともに楽しんでほしいと言います。冬に向け、別棟で楽しむサウナ計画もあるそうで、「滝ヶ原ビレッジ」はまだまだ拡張中。
「限界集落と言われる過疎化が進む地域も、こんなにポテンシャルが高いんだということを知ってもらいたい」と話す小川さん。何かを作り出すことで人を呼び込むのではなく、その土地にあるものを生かして暮らしを共有する。世界中の人やまちが元気になる鍵が、ここにあるに違いありません。
さて、9月29日から10月1日まで、滝ヶ原ファームが主催する音楽フェス「ishinoko2023」が開かれます。音楽と食をメインテーマに、パフォーミングアートなどエネルギッシュな3日間。人々のつながりや持続可能性にも焦点を当てた、滝ヶ原の新しい〈おまつり〉!
加賀温泉駅と会場を結ぶシャトルバスも出るそうですので、滝ヶ原に行ったことがないという方も是非。チケットは1日券と、3日間の通し券も。18歳未満は無料。特設サイトからチケットが購入できます。
企画しているのは滝ヶ原に魅せられた海外からのゲストスタッフだそうで、昨年に続き、今年も素敵なフェスにしようと奮闘中とのこと。皆が集まって心を一つにする。さまざまな人たちが集い楽しむ「滝ヶ原ビレッジ」には、これからの「村」づくり、つまりコミュニティづくりのヒントがあるに違いありません。みなさんもぜひご体感ください!