【小松は“人間らしいまち”】糸井さんの声
小松に住む人たちの本音をお伝えする「まちのみんなの声」。13回目に登場いただくのは、「Auberge “eaufeu”(オーベルジュ オーフ)」のシェフ、糸井章太(いといしょうた)さんです。
糸井さんは京都府出身の31歳。2018年に日本最大級の料理コンペティション「RED U-35」で、史上最年少の26歳でグランプリを受賞した、実力派のフランス料理人です。
糸井さんがシェフを務めるのは、2022年7月にオープンした小松の山間にあるオーベルジュです。オーベルジュとは、宿泊のできるレストラン。その土地の食材をふんだんに盛り込んだ料理を提供するのが特徴で、「食を楽しむために滞在するホテル」と言っていいかもしれません。
建物は、過疎化のため廃校となった旧西尾小学校をリノベーション。校舎の雰囲気を所々に残しながら現代アートと融合させ、懐かしくも洗練された空間になっています。観音下の石切場を望む絶好のロケーションで、小松で受け継がれてきた石の文化を感じる場所。内装のあちこちにも小松の石材が使われているんですよ。
オープン1か月前に小松に移住し、はや1年半。糸井さんは小松の旬の食材を使いこなし、あっと驚く美しい料理に昇華させます。なんと、糸井さん自ら山菜やきのこを採りに山に入ったり、河原でサワガニを捕まえたりするんだそう。食材へのこだわりは半端ありません。
フランス料理の基礎をしっかりと学んだ後、フランスやアメリカの名店でも経験を積んだ糸井さん。繊細な美意識や柔軟な発想で、新しい価値の創造を追求しています。
今年、厳しい評価基準で知られるレストランの評価本「ゴ・エ・ミヨ」で、才能と情熱、技術が今後の活躍を大いに期待させる新進気鋭の料理人として「期待の若手シェフ賞」が贈られました。
地元の食材を活かした料理は、どれも絶品。素材の良さを存分に引き出しています。黄身のねっとり感がたまらない濃厚なポーチドエッグに添えたのは、朝採りのアスパラガス。湯通しを短時間に抑えることで、フレッシュでシャキッとした歯応えに仕上げています。食材にこだわる糸井さんの姿勢と、農家から直接仕入れることができる〈地の利〉が結集した一皿です。
地元の石材や河原の石を器として使うなど、まるで小松の自然をテーブルの上に再現したかような、野趣あふれるエネルギッシュなフランス料理。近くで採取した花や野草をあしらいます。小松の今の景色を五感で楽しむことができる、華やかでワクワクするディナー。もう、エンターテインメント!
施設名の「eaufeu」とは、フランス語で、水(eau)&火(feu)のこと。この地ならではの清らかな〈水〉、そしてあらゆる生命の原点である〈水〉を活かしながら、自分たちのチームが〈火〉を灯す。糸井さんは革新的なレストラン「オーベルジュ オーフ」で、そんな化学反応を楽しみながら、この場所で料理をする意味に真摯に向き合っています。
糸井さんに、小松での暮らしについて伺ってみました。
Q. 小松の食材を使ってみていかがですか?
とにかく楽しいです。小松は季節ごとに特色のある食材が豊富。春は山菜、夏はたっぷりの野菜、秋は新米にきのこ、そして冬はカニやジビエ、根菜もおいしいですね。自分の想像を超える料理が出来上がることも度々で、大きなやりがいを感じます。
小松の食材でこんな表現ができるのかと驚いてくださると嬉しいですし、そのような感動体験は人生が豊かになると信じているので、地元の方にもぜひ体感していただきたいです。
Q. 小松の暮らしはいかがですか?
小松の方は温かいですね。「畑から野菜とっていっていいよ」と声をかけていただくこともあり、田舎ならではの自然な交流を楽しんでいます。
県外や海外のお客様も多いんですが、地元の方々がリピーターとして訪れてくださるのが何より嬉しいです。やはり地元の人に愛されるレストランでなければいけませんし、「地元にこんな店がある」と誇らしく思ってもらえるよう、チームとして日々精進を重ねています。
Q. 小松で気に入っている場所はありますか?
那谷寺はとても素敵な場所ですね。パワースポットというか。以前はパリの街並みなどが大好きだったのですが、最近は、都会よりも自然の中に身を置く心地よさを感じています。
小松は夕日が本当に綺麗。仕事では時間に追われるので、オフの日は自然の中でゆっくり過ごすことも多いです。小松には海も山も川もあって、自然豊かなところが気に入っています。
Q. 小松を一言で表すとしたらどんなまちですか?
「人間らしいまち」。冬に向かうにつれ白山の山頂から白くなり、暖かくなってくると下の方からだんだん雪が解けていって。四季の移り変わりを至るところで感じられることは、人間が持っている感性を磨くことにもつながっていると思います。
小松は都市部へのアクセスが良く、とても便利なまちでもあります。まもなく北陸新幹線が延伸しますが、多くの人に小松駅で降りてもらえるよう、連携しながら発信力を高めていきたいと考えています。シェフ同士のコラボレーションなど、小松の魅力を存分に活かせるような自由で挑戦的な企画をどんどん練っていきたいですね。
(取材は2023年12月)