【保存版】小松の町中華特集!歴史からとっておき名店リストまで
小松にはおいしい中華料理店がたくさんあるのをご存知ですか?
小松の人たちにはそれぞれ、行きつけの中華料理店があるという噂が。
そして、
「私は○○の餃子!」
「僕は△△のチャーハンだな」
「□□の焼きそばが好き〜」
など、推しの店&メニューで盛り上がる光景も目にします。
そんな小松市民が愛する【町中華】を、その歴史とともにご紹介します!
小松の【町中華】の歴史
小松中華組合によると、今から70年前は、小松に中華料理店はなかったそうです。第1号となったのは、今はなき「餃子菜館 清ちゃん」でした。
全ては一軒の店から
秋田出身で親類の縁で小松に移住したという「清ちゃん」の元店主。22歳の時に東京の中華料理店などで修業を始め、24歳で小松に戻り、餃子(ぎょうざ)を提供する屋台を始めました。そして1959年に店を構え、小松で初めての中華料理店としてスタートしたのです。
屋台時代から提供していた餃子は、少しずつ改良を加え、八角の香りが効いたクセになる味に。
「清ちゃん」といえば、忘れてならないのが〈塩焼きそば〉。炒麺(ちゃーめん)という名で提供されていましたが、今やみんなが知っている小松名物〈塩焼きそば〉は「清ちゃん」が発祥なのです。
同じ太さに揃えられたモヤシやニンジンなどの野菜をたっぷりと入れ、シャキシャキとした歯応えが特徴。モチモチした太麺のゆで加減にもこだわり、オーダーを受けてから一皿ずつ丁寧に作っていました。
「清ちゃん」で修業したお弟子さんたちも、独立して自店のメニューに加えたのは、もちろんソースではなく【塩味の焼きそば】。こうして、小松市内に〈塩焼きそば〉を提供する店が増えていきました。
2021年8月、店主高齢化のため、惜しまれながらも65年の歴史に幕を下ろした「清ちゃん」ですが、〈塩焼きそば〉をはじめ、小松の町中華の心意気は今も受け継がれています。
〈塩焼きそば〉が小松のソウルフードに
5年ほど前に、小松中華組合の青年部が中心となって始めたのが、小松名物の〈塩焼きそば〉を全国に広めよう!という活動です。
それぞれのお店が提供する〈塩焼きそば〉を紹介し、マップを手に食べ歩いてもらおうという試みで、全国のイベントに出店するなどPR活動にも力を入れてきました。
小松では当たり前だった【塩味の焼きそば】が、ご当地グルメ〈塩焼きそば〉として全国区に。小松中華組合の地道な活動により、市民も「小松のオリジナルの味だったのか」と改めて理解、小松のソウルフードとして〈塩焼きそば〉が定着したのです。
家でも簡単に楽しめるようにと「小松名物 塩焼きそば」の監修にも携わり、売上の一部は地元の食育活動にと寄付されました。
小松のあちこちの中華料理店で提供されている〈塩焼きそば〉。もちろん食べ比べも楽しみの一つですが、おいしいのは〈塩焼きそば〉だけではありません。それぞれの店が独自の味を追求し、あれもこれも食べたくなるようなメニューがいっぱい!
数あるメニューの中から、こだわりのイチオシを一品ずつご紹介いただき、住所や、最新の営業時間・休業日などとともにリストアップしました。どれもこれも食べたくなるものばかり!ぜひ何日もかけて、食べ歩いてください。
餃子菜館 勝ちゃん
「清ちゃん」の元店主の弟さんが、1961年に開店。といっても、兄弟で別に始めたので、どれも「餃子菜館 勝ちゃん」オリジナル。現在63年目、親子3代にわたって通い続ける人もいる、小松で一番歴史のある中華料理店です。
「餃子菜館 勝ちゃん」のイチオシは「塩焼きそば」。店主自ら「美味しくなーれ、美味しくなーれ」と声をかけながら作っているんだとか!
具材は豚肉に、モヤシ・ニンジン・長ネギ・キャベツと野菜たっぷり、ボリューミー。太い麺独特のもっちりとした歯応えと、野菜のシャキシャキ感の対比がたまりません。ほんのちょっぴり、地元の老舗の醤油を隠し味にしているとのこと。「変わらない地元の味を守り継いでいきたい」そうです。
餃子酒蔵 南栄
1967年に開店。こちらも代々家族で通っている方が多いそう。蔵をリノベーションしたお店に入ると、目の前の石壁に圧倒。カウンターの上のステンドグラス風の装飾もレトロで、よき昭和の香りがするかわいいお店なのです。
「餃子酒蔵 南栄」のイチオシは「ギョーザ」です。先代は初期の「清ちゃん」で修業。今はなき名店の創業時の餃子を今に伝えています。
キャベツ、ニラ、豚肉というシンプルな具材で、たっぷりとニンニクを効かせているのがこだわり。野菜の水分を残すことで、外はかりっと中はふんわりとした食感に仕上がります。もちろんラー油も手作り。一味はあえて濾さずに、ざくざくっと一緒に味わうスタイル。はまります。
中華レストラン 珍龍
1971年に開店。初代は小松と金沢で修業し独立。最初はカウンターだけでしたが、人気となり移転し、宴会などさまざまに対応できるように。掘りごたつの座敷席もあり、子ども連れや年配の方にも嬉しいお店です。
「中華レストラン 珍龍」のイチオシも「餃子」。こちらは細長いスリムな形で、小さいお口にも食べやすいのが特徴。
具材は、豚肉、キャベツ、長ネギ、ニラ。野菜が多めであっさりした味わいですが、ニラの香味が効いていてパンチが!全体のバランスを見極めて調整しているとのこと。タレはこの餃子に合うよう、酢が強めで甘みが引き立つブレンドに。皮はもちもちで、つるんとなめらか。何個でもいけるおいしさです。
中華料理 蘭蘭
1974年に開店。初代は大阪で修業の後、親戚の縁で小松で独立。「清ちゃん」や「勝ちゃん」とは異なる路線で、小松の中華料理の幅を広げてきました。テイクアウトの注文も多く、長く地元に愛されるお店です。
「中華料理 蘭蘭」のイチオシは「肉団子」。ひき肉のふんわりした食感を最大限に生かすために、注文を受けてからタネを作り始めるのが最大のこだわり。時間を置かず揚げることで、外側は香ばしく、中は柔らかに仕上がるんだとか。
具材は豚ひき肉に、玉ねぎと卵のみ。玉ねぎは粗めなので、ふわふわのお団子にしゃきしゃきした歯応えが加わり、もうたまりません。酸味控えめでほんのり甘い「甘酢あん」は白いごはんにもぴったりです。
中国食堂 餃子屋 なおけん
1976年に開店。〈塩焼きそば〉の普及活動に力を入れる2代目が店を継ぎ、「カジュアルな町の中華屋さん」を目指して、小松の中華料理界に新しい風を吹き込んでいます。
「中国食堂 餃子屋 なおけん」のイチオシは「坦々麺」。担いで売っていたという坦々麺発祥のストーリーをオマージュして、10年前に考案しました。
ねりごまを使うことで粘度を高めたスープは、ごまの香ばしさが際立つ優しい甘味。太い縮れ麺を使うため食感が良く、スープとよく絡みます。肉のそぼろではなくチャーシューを細かく切って添えることで、よりスープのねっとり感が楽しめるんだとか。人気メニューなのも頷けます。
珍香楼シェアン
1969年創業の「珍香楼」を受け継ぎ、2010年にリニューアルオープン。若い女性にも受け入れられるような中華料理店を目指し「珍香楼シェアン」として新しいスタートを切りました。内装はシックでクールアジアンな雰囲気。
「珍香楼シェアン」のイチオシは「油淋鶏(ユーリンチー)」。揚げたてカリカリの鶏肉に、とろみをつけた甘辛いソースをかけて。ソースは3日ほど柑橘類を漬け込むことで、甘酸っぱくさわやかな香りを最大限に引き出しています。
ざくざくしたネギと、たっぷりのサニーレタスに糸唐辛子を添え、見た目から食欲をそそります。揚げ物ながら軽い口当たりも嬉しいポイント。おつまみにもごはんにもどちらにもぴったりの逸品です。
まとめ
今はなき一軒の中華料理店から始まった、小松の町中華。その歴史は70年に迫ろうとしています。
今回ご紹介した以外に、小松中華組合に加盟していない中華料理店も、たくさんあります。それぞれの店がこだわりの逸品を追求し、馴染みの味の継承に力を入れたり、趣向を凝らしたメニューを展開したり。
どの店もお客さんと真摯に向き合い、市民に愛され続ける味を提供し続けてきたことで、小松の町中華は彩りにあふれ、小松特有の食文化として定着しているのかもしれません。
小松の町中華は、また食べたくなるほっとする味。そして、カウンター越しの店主とのやりとりにも心が和みます。このリスト片手に、みなさんも小松の町中華をめぐる旅を楽しんでみてくださいね。
(取材は2023年11月)