【小松は“可能性を秘めた”まち】 小茂田さんご家族の声
小松に住む人たちの本音をお伝えする「まちのみんなの声」。第6回目にご登場いただくのは、小茂田諒(こもだりょう)さん・麻裕(まあゆ)さんご家族です。小学2年生の莉子(りこ)ちゃん、幼稚園年長組の幸玄(こうげん)くん、1歳の歩功(ほく)くんの5人で暮らしています。
小茂田諒さんは大阪府出身、麻裕さんは加賀市出身のともに34歳で、2019年に小松市に移住されました。諒さんは理学療法士として大阪の病院に勤務していましたが、独立を機に移住。現在、障がいのある児童対象の運動療育型の放課後等デイサービス「3ピース 小松(スリーピースこまつ)」と、重症心身障がい児専門の児童発達支援、放課後等デイサービス「MIRAI 小松(みらいこまつ)」、そしてこの3月からは0歳から年長児までに特化した「MIRAI KODOU(みらいこどう)」も運営しています。
重症心身障がい児、いわゆる脳性まひ専門のデイサービスの施設は珍しく、諒さんの熱い思いにより開設しました。諒さんは脳神経外科を専門とする理学療法士として〈脳〉を集中的に学び、病院勤務の中で、体を動かす司令塔である〈脳〉の潜在機能を最大限に活かす回復プログラムを組み立ててきました。
仕事を始めて3年目の頃、脳に障がいを持って生まれた親戚の2歳の男の子に向き合い何もできなかった悔しさから、小児医療の勉強に力を入れてきた諒さん。全身の緊張が強く眠ることもままならない辛さをどうにかしてあげたい。それから10年、重症心身障がいのある子どもたちに向き合い、機能訓練だけではなくボール遊びなどを通した感覚運動や、安心して心地よく布団に身を預けられるため筋肉の柔軟性を高める施術など、眠りへの効果的なアプローチ方法にも取り組んでいます。
理学療法士として10年を迎え、世の中に貢献できる仕事をしたいと独立を考え始めたとき、医療的なケアが必要な子どもたちの通えるデイサービスは日本でもほとんどありませんでした。学校へは親が送迎するしかなく、家庭でのケアについても時間的、肉体的、心理的に負担がとても大きいため、保護者のサポートの必要性を常々感じていました。妻の麻裕さんの実家が加賀にあることから、石川県の南部地域で施設を立ち上げることにしました。
諒さんは通所する子どもたちやその家族に喜んでもらえればと、入浴の血行促進やリラクゼーション効果に注目。デイサービスの枠にとどまらず、購入費用は大きかったものの専用ストレッチャーで体を横たえながら入浴できる設備を導入しました。目指しているのは、ただ時間を過ごすのではなく〈一人一人の幸福度に向き合うリハビリテーション施設〉であること。さらに、大人になるまで分断されることなく継続的にリハビリを行うことが重要なことから、0歳から18歳までトータルで受け入れられるよう施設を整えるほか、居宅型のサービスにも挑戦しています。
加賀市出身の麻裕さんは、大学進学を機に大阪へ。看護を学び、Uターンするまで大阪で看護師として勤務していました。現在は3人の子育てをしながら、看護師の資格と経験を生かして諒さんの施設を手伝っています。
そんな小茂田さんご夫婦に、小松に施設をオープンした理由や、小松の暮らしなどについて伺いました。
Q . なぜ小松市に施設をオープンしようと思われたのですか?
[諒さん]
まず重症心身障がい児や医療的ケア児を受け入れる放課後等デイサービスの事業を大阪で始めることは考えていませんでした。生まれ育った場所ではありますが、暮らすなら広々とした田舎がいいと思っていたので、妻の実家がある石川県を選びました。ここに事業所を構えたのは、小松のこの場所でしか有り得なかったからです。何かあったときのことを考えると、消防署がすぐ近くにあり、救急車で小松市民病院まで10分ほどで到着できること。受け入れる子どもたちが通う小松瀬領特別支援学校には約20分で送迎もしやすいこと。この3つが重なる地点ということで、串町を選びました。
[麻裕さん]
加賀の実家と気軽に行き来できる距離で嬉しいですし、自分の生まれ育った地域なので安心感もありますね。近所に親戚が住んでいるのも心強いです。
Q . そのときの支援やサポートはどうでしたか?
[諒さん]
重症心身障がい児専門の施設を作りたいと最初に市役所に相談に行ったとき、30歳そこそこでそんな大変な事業に取り組むなんてと本気にされていなかったかもしれません。でも絶対に作ると心に決めていたので、許可もいただき無事オープンすることができました。住居兼事業所として新築したので物品購入なども多く、「ようこそ小松」定住促進奨励金として40万円(45歳以下の若者の世帯加算10万円を含む)を助成してもらえて助かりました。
[麻裕さん]
3人目は移住後に授かったので、いろいろある子育て支援サービスを利用しました。母子手帳の交付を受けると5万円が給付される「赤ちゃん給付金」や、1歳の誕生日まで毎月おむつをプレゼントしてくれる「赤ちゃん紙おむつ定期便」など助かりました。子どもの医療費の助成も18歳まで窓口負担がないなど、子育て支援が手厚くてとても有難いです。
Q. 小松でよく行く場所はありますか?
[諒さん]
イオンモール新小松(笑)。移住してすぐコロナ禍で行くところが限定されてしまったときは、子どもたちと木場潟公園など広々と遊べる場所によく行きました。
[麻裕さん]
航空プラザ、カブッキーランドですね。こまつの杜は男の子がとても喜びますし、サイエンスヒルズこまつにも行ったりします。子どもと一緒に遊べる場所によく出かけますね。
Q. 小松市の魅力はどこですか?
[諒さん]
僕はゴルフをするので、車で10分以内でゴルフ場に行けるのは魅力ですね。大阪ではあり得ない環境です。冬はスキー場にも近いし。そういう自然に近い場所だというのは小松のいいところだと多います。
[麻裕さん]
航空祭もよかったです。小松に住んだからには行きたいと思っていたので。
[諒さん]
航空祭は航空自衛隊の基地がある小松ならではですよね。福祉事業者ということで航空祭前日に招待されて、人も少なく間近で見ることができて感動しました。
[麻裕さん]
自然が豊かだし、買い物に便利だし。和菓子も美味しいですよね。ご近所の方とも仲良くさせていただいて、田舎ならではの良さを感じます。
Q. 小松市を一言でいうならどんなまち?
[諒さん]
〈可能性のある〉まちですね。小松には世界につながる空港があって、来年には北陸新幹線も開通します。利用者を素通りさせるのではなく、小松の街なかに誘導することで、小松の可能性がどんどん広がると思います。大阪のように空港と市内中心部を結ぶモノレールなんかがあったらいいですね。駅周辺に魅力的なショッピング施設などがあれば、もっと人が集まる場所になるのではないかなと思います。
[麻裕さん]
小松は〈子育てしやすい〉まち。天気のいい日は木場潟公園でサイクリングをしたり自然の中で過ごせるし、雨や雪の日なら航空プラザなどで体を動かせる。子どもが遊べる無料の施設が多かったり、幼稚園では茶道など小松の文化や自然に触れるプログラムを提供していたり、子育てにいい環境が整っていると感じています。
(取材は2023年2月)