【小松は“世界に誇れる、可能性のあるまち”】越栄さんご兄弟の声
このところ、急に秋がどんどん深まってきましたね。栗やさつまいもなど、秋の味覚も楽しい季節。今回は、旬の食材を活かしたスイーツが自慢の小松のパティスリー「マルフジ」さんにお邪魔しました。
1955年創業。「ケーキハウスマルフジ」は小松に初めてできた洋菓子店として、68年間地元の人を中心に愛されてきました。現在は3代目となる、越栄純平さんと亮弥さんがお店を受け継いでいます。お二人とも東京の専門学校に進み、修業ののち小松に戻ってきたというUターン組。お互いに「リョウ」「ジュン」と呼び合う仲の良いご兄弟です。
まずは、目にもキラキラ、美味しそうなスイーツにあふれるお店からご紹介しますね。
誕生日や記念日を祝うケーキ。家族の特別な時間の真ん中にある存在として、華やかで美味しいだけではなく、子どもたちにも安心して食べさせることができるケーキをと、安全で信頼できる食材選びにもこだわってきました。フルーツは全て国産。そして一番美味しくなる〈旬〉にこだわることで、季節の移り変わりも感じさせてくれます。
この時期はハロウィンの飾りでいっぱい!訪れたお客さんに楽しんでもらいたいというおもてなし精神にあふれた店内です。
実は越栄さんご兄弟、昨年11月、隣の敷地に新しいお店をオープンしました。「スイーツガーデンマルフジ」。これまでのケーキや焼菓子を販売していたお店に加え、チョコレート、ジェラート、パン(ベーカリーは現在お休み中)の専門店が独立して入った、お菓子のテーマパークです。広さは本店と合わせて約300坪!
オレンジのレンガは南ヨーロッパの邸宅を思わせる雰囲気。緑いっぱいの広々としたお庭では、この夏お祭りも開いたんだとか。大人だけでなく、子どもたちがかけっこしたり、かくれんぼしたり、自由に過ごせる場所を作りたい。そんな思いを具現化した施設になっています。
スイーツガーデンは亮弥さんが担当。旬の地元の食材にこだわるだけあって、能登ミルクをはじめ、五郎島金時や松任梨、地元産のブルーベリーなど、ジェラートやかき氷にも地元メニューが光ります。
こちらはショコラトリー。宝石のようなボンボンショコラは美しすぎてため息・・・。ナッツやドライフルーツを散りばめたタブレットショコラも。ショコラティエである亮弥さんの素材へのこだわりと技術が堪能できるお店です。
さて、そんな素敵なお店を手がけている越栄さんご兄弟。小松で育まれたお菓子への思いや、地元愛についてお話いただきました。
Q. お二人とも18歳で東京の専門学校に入って、しばらく地元を離れていらっしゃいましたが、小松に戻ってこられていかがですか?
[純平さん]
東京や北海道で修業を積んで、5年前に小松に戻ってきたんですが、広々とした田んぼが目の前に広がる風景はそんなに変わってなくて、ほっとしました。住み慣れた場所ですし、友達もたくさんいるし、地元はやっぱり心が落ち着きますね。辛いことや悩むことがあっても、地元の人たちに支えてもらえているという温かさを感じています。
[亮弥さん]
僕はさまざまな店で経験を積もうと地元を出たり入ったりしていたんですが、兄とともにマルフジを継いで新しい店づくりに挑戦するため、3年前に完全に戻ってきました。仕事を通じていろんな方とコラボレーションするんですが、実は同級生だったとか。地元の人たちと手を取り合って、一緒に何かを作り出せることは楽しいし素晴らしいですね。
Q. 地元ならではのコラボレーションも多いのですね。
[亮弥さん]
小松のブルーベリー農家さんや、さるなしを栽培する農業組合さんなどから直接仕入れた完熟フルーツを使ってコンフィチュールなどを商品化しました。地元の魅力をスイーツを通して知ってもらえることにやりがいを感じています。
[亮弥さん]
昨年はチョコレートの最中「円(まどか)」を開発しました。ヘーゼルナッツを加えたチョコレートの中にポン菓子を入れてアクセントをつけているんですが、これは小松産の米で市内の就労施設が作っているもの。手にとってくださるお客さまと、菓子職人や生産者のご縁が丸い輪のようにつながり、地元が誇る素晴らしい素材を知ってほしいという願いを名前に込めています。今年は新フレーバーの〈加賀棒茶〉も加わりました。地元に愛されるお菓子として広がっていってもらいたいですね。
Q. シェフパティシエを務める純平さんの思い入れの深いお菓子は?
[純平さん]
すべてに思い入れはあるんですが、人生を変えてくれたケーキは「メトル」ですね。東京で修業させていただいた洋菓子店のシェフが世界一になったときのケーキで、初めて食べたときに衝撃を受けました。自分もこんなお菓子を作りたいと。その初心を忘れず、師匠への敬意も込めて〈メトル=師匠〉と名付けました。マルフジでは、その時期の一番美味しいフルーツを使うというコンセプトがあるので、国産の清見オレンジを使って、旬を感じるケーキに仕上げています。
[純平さん]
スイーツガーデンの2階には厨房があるんですが、ここでは子どもたちと一緒にお菓子作りができるようなワークショップをしていく予定です。誕生日を迎える子どもたちに将来の夢の絵を描いてもらい、それをケーキに仕立ててプレゼントする「夢ケーキプロジェクト」で、初回は11月12日。誕生日の特別な思い出にしてもらうのと同時に、お菓子への興味や理解を深める場になってくれることを期待しています。
Q. 小松でよく行く場所はありますか?
[純平さん]
中学の部活でサッカーをしていたので、木場潟や小松ドーム、市民センターなど試合をした場所は思い入れがありますね。今は末広にある弁慶スタジアムでフットサルをしています。人工芝の室内練習場があるので、天候を気にせずにプレーできるのがいいですね。小松はスポーツ施設が整っていて嬉しいです。
[亮弥さん]
木場潟です。独身のときは一人で行って広々とした景色を眺めて心を癒していたんですが、今は1歳の子どもを連れて行っています。休みの日は必ずといっていいほど(笑)。家を建てるとき〈木場潟の近く〉が絶対条件でした。
[純平さん]
スイーツガーデンは木場潟公園をイメージしているんですよ。父はピクニックする親子を見て以来、太陽の下で子どもがはしゃぎまわるお菓子屋さんにしたいっていうのが夢だったみたいで。そんなみんなが笑顔になる陽だまりのような場所にしていきたいと思っています。
Q. 小松市の支援制度で嬉しかったものはありますか?
[純平さん]
分譲宅地に新築すると「住まいる小松奨励金」の対象ということで、家を建てる際に10万円の補助があったのは助かりました。
[亮弥さん]
僕の家は薪ストーブをつけたので「再生可能エネルギー設備設置費補助金」を活用しました。子どもがまだ小さいので、子育て世代への支援制度が充実しているのは嬉しいですね。特に「赤ちゃん紙おむつ定期便」がありがたいです。
Q. 小松をひとことで言うとどんなまち?
[純平さん]
〈世界に誇れる・可能性のある〉まち、ですね。こういう仕事をしているといろいろなつながりができるので、九谷焼をはじめ、小松にはすごい職人さんがたくさんいるなというのを実感しています。
[亮弥さん]
世界を相手に活躍している人が結構いらっしゃいますよね。世界のコマツもあるし。小松に住んでいる方は、とても地元愛が強い。外から戻ってくると小松に生まれてよかったなと思いますし、すごい人やすごいものがたくさんある。大きな可能性を秘めたまちですね。
(取材は2023年9月)