【小松を愛する コマツビト】トランポリン元五輪選手、岸彩乃さん
こんにちは。6月になりましたね。先月は小松の歌舞伎シーズンでした。日本こども歌舞伎まつり、お旅まつりと県内外から多くの方に小松を訪れていただきました。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました!
さて、お旅まつりの名物といえば、曳山の上で演じる子どもたちによる歌舞伎です。今年の当番町の一つ、大文字町の子どもたちは成田市に遠征。同じ「歌舞伎のまち」代表として、5月21日、成田山総門前で開かれた「成田伝統芸能まつり春の陣」で上演してきました。会場からは温かな大きな拍手が…。感激です。
そこに、小松市が誇るアスリート、トランポリン競技のロンドン五輪代表、岸彩乃さんの姿が!
成田市で子どもたちに体操などの指導をしてきた岸さん。これからトランポリン要素も取り入れた体操教室や、新しいトランポリンの普及活動を進めていきたいとのことで、来月からは拠点を都内に。そんな活力あふれる岸さんにお話を伺いました。
まずは岸さんのプロフィールから。
体操選手のご両親の元に生まれた岸さん。岸さんが生まれる前に小松に移り住んだのも、体操の指導を行うためでした。子どもたちに体操の道に進んでもらいたいというご両親の思いとは裏腹に、バランス感覚を養うために始めたトランポリンにすっかり夢中に。体操やバレエも習ったそうですが、空中での不思議な浮遊感が楽しくて楽しくて、自身で決めたのは「トランポリン」。
「結局弟もみんなトランポリン選手になってしまって、両親は残念がっていました。でも、体操もバレエもトランポリンには大事な要素で、競技の中にしっかり生かされているんです」
トランポリンはとてもダイナミックなスポーツ。天井に届きそうなほど高く跳んで、空中でくるくると宙返りするアクロバティックな技は、観ているだけで息を呑みます。
岸さんは、体操やバレエで培った姿勢の美しさも手伝ってめきめきと頭角を表し、高校時代に全国高校選手権を連覇。大学時代にはオリンピックの舞台に立ちます。その後も世界選手権で金銀メダルを獲得し、女子トランポリン競技の世界に歴史を残しました。引退後も後進の指導にあたりながら、トランポリンの普及活動に力を入れています。
Q. 小松でトランポリンを始めたことは、選手人生としていかがでしたか?
石川県はトランポリン教室があちこちにあるんです。いずれ体操選手になるために…ということで始めたトランポリンでしたけど、高く跳ぶのが楽しくてすっかりはまってしまいました。
〈楽しい〉と〈怖い〉は、今も隣り合わせで。でもそこを乗り越えて、難しい技ができるようになると嬉しくて。オリンピックでは〈笑顔で頑張る〉という意味で「顔晴る(がんばる)」という言葉を支えにしていたんですけど、勝負は30秒と高い集中力が求められるので、競技中は顔が怖いと言われていました(笑)。
トランポリンが盛んな地域で練習を積み重ねてこれたことは、たくさんの仲間たちと支え合えてとても大きかったですね。高校時代は毎日のように小松総合体育館で練習をしていたんですが、管理の方に「新聞見たよ、頑張っとるね」といつも声をかけていただいたり、地域の方に温かく応援してもらえたりしたことは何よりの励みでした。
Q. 小松で岸さんが始めたトランポリン大会について教えてください。
2021年から、小松で「岸彩乃杯シンクロナイズドトランポリン大会」を開いていて、今年も3回目を開催したいと思っています。シンクロナイズド競技は、2台のトランポリンを使って2人が同じ演技を行って、同調性を競います。
実は新型コロナの影響で、全日本ジュニア選手権は2020年の開催が中止になり、2021年は個人戦のみ行われたんですがシンクロナイズドは中止になってしまいました。こじんまりとでいいからシンクロナイズドの選手たちに大会の場を作りたいと、小松市のスポーツ育成課の方に相談したところ、サポートしてくださって開催が決まりました。
男女混合ペアでも出場できるなど独自の大会として進化しているので、これからも続けていきたいですね。トランポリンの魅力を感じてもらえると同時に、参加してくれた選手が世界に羽ばたくきっかけになるような大会を目指しています。最初は県内の選手だけで、2回目は北信越に広げて開催したんですが、今年は全国から選手が集まってくれるといいなと思っています。
Q. 小松にはよく帰郷されるんですか?
よく帰っています。東京から飛行機でも新幹線でも帰れるのは、本当に便利でありがたいですね。地元の友だちに会ったり、トランポリンの後輩たちの練習を見に行ったりしています。家族が全員そろうのは大会かな(笑)。みんなで応援に行くんです。何があっても応援してくれる家族の存在は、小さい頃から心の支えでした。
Q. 成田も小松も歌舞伎のまち。歌舞伎にまつわる思い出はありますか?
私は芦城小学校出身で、友だちが曳山子供歌舞伎や勧進帳に出ていたので観に行っていました。学校でも歌舞伎を鑑賞する機会があって、歌舞伎は小さい頃からとても身近でしたね。お旅まつりでは女の子が歌舞伎、男の子が獅子舞をするんですけど、多太神社の春祭りでは私も弟と子供獅子に参加したんです。トランポリンの練習を早めに切り上げて、ワクワクしながらお稽古に行っていました。
小松の歌舞伎や獅子舞は子どもたちが主体で、大人はサポート役。そんな地域ってなかなかないですし、大人になって改めてすごい環境にいたんだなと実感しています。そしてその舞台に、今は幼なじみのお子さんが出演していて感慨深いですね。子どもたちが一生懸命になって、小松の文化をずっと受け継いでいるというのは、本当に素晴らしいことだと思います。
Q. 小松の魅力はどんなところだと思いますか?
小さい頃は、芦城公園や緑地公園で友だちとたくさん遊びました。家族で登山に行ったり、スノーボードに行ったり。小松市は大きな公園やスキー場など自然を感じる場所がとても多くて、しかも近くて気軽に行けるというのは魅力的ですね。
そしてトランポリンをはじめ、いわゆるマイナーといわれるスポーツが盛んなのも小松市ならではです。カヌーやボートなどの水上競技や、飛び込みができる施設もある。そのようなスポーツが誰でも気軽に体験できるような環境が整えば、さらに小松の魅力が増すのではないかなと思っています。
Q. 最後に、岸さんの夢を教えてください!
トランポリンの魅力をたくさんの人たちに知ってもらって、トランポリンを楽しむ人たちが増えることです。
トランポリンは楽しい上に体幹も鍛えられ、バランス感覚も養われる、他のアスリートの人たちにとっても良いスポーツです。一般の方向けにも、ヘルスケアやフィットネスとしての期待が高まっています。普及はもちろん、トランポリン界全体が元気になっていくような活動を続けていきたいと思っています。
岸さんは、昨年5月に結成した「こまつまちづくり応援隊」のメンバーとして活動されています。「岸彩乃杯シンクロナイズドトランポリン大会」はもちろん、今後の小松での岸さんの活躍も楽しみです!