#20【小松は〈住むのにいいまち〉】中島睦美さん
小松在住の方に、日々の暮らしや小松の魅力についてお話しいただく《まちのみんなの声》。今回は、石川県漁業協同組合の組合員で、安宅漁港の「港の直売所」の運営を担当する中島睦美(なかじま・むつみ)さんです。
安宅漁港「港の直売所」
小松市内を流れる一級河川、梯川。その河口近く、北陸自動車道と交わるあたりに「安宅漁港」があります。
この敷地内に、今年5月にできたのが「港の直売所」。青い壁が目印です。冬場を除く毎週土曜日、安宅沖で獲れた新鮮な魚や、作り立ての美味しいお惣菜を販売しています。
伺った日の刺身は7種類。スズキ、鯛、アジ、フクラギのほか、こしょう鯛などスーパーでは見かけない珍しい魚の刺身も!
そして魚を中心としたお惣菜が充実。きじはた、かさご、おこぜの唐揚げや、イサキ、かます、キス、黒鯛のフライなどなど20種類以上。食べたことのない魚も多くて、全部味見したくなってしまうほど。キャベツやトマト、大根などの野菜もフレッシュな小松産です。
予約すれば注文できるお弁当はなんと500円!この日はサザエご飯も入っていました。サザエや牡蠣などの貝類も安宅の海で獲れるんですって。
直売所を切り盛りする中島睦美さん
この直売所を担当しているのは、石川県漁業協同組合の組合員、中島睦美さん。高知県の豊かな自然とともに生まれ育ち、小学生のときから釣りが趣味。30代のときに仕事で小松に移り住んでからも、福井の三国でプレジャーボートをレンタルするなどしてよく海釣りに行っていたそうです。
もともとは資格を活かして調理や建機の塗装などに携わっていました。漁師さんから誘われて漁のお手伝いをするようになったことをきっかけに、6年前、漁師の道へ。
これまでの仕事にもやりがいを感じていましたが、趣味でもある釣りが思い切りできるという環境が楽しく、どんどん引き込まれていったそうです。今では体も強くなり、風邪ひとつひかないんだとか。
「未利用魚」を美味しく食べてほしい!
漁師になった中島さんは、規格外のサイズだったり、漁獲量が十分でなく数が揃なかったり、一般に知られておらず流通しにくい種類だったりと、市場に出回らない「未利用魚」が多いことを知りました。
それらは仲間内で処理するしかありませんでしたが、調理師の免許を持つ中島さん、有効活用できないかと考えます。そこで始めたのが「直売所」。空いていた小屋に、自腹で中古の調理機器を購入し加工所を作りました。
未利用魚を鮮魚のみならず、一手間かけて干物やお惣菜に。良心的な価格も手伝って、たくさんのお客さんが訪れるようになりました。他の漁師さんも協力し、取り扱う魚の量も増えています。
直売所の人気が高まってきたため、11月には増設して販売スペースを設けることに。でも、週1回の販売のペースは変えないとのこと。その理由は「漁に出たいから」。ここは、漁師の仕事に魅せられた中島さんの〈好きなこと〉にあふれるお店なのです。
「魚の美味しさを知ってもらえば、魚を食べたいと思う人も増えるに違いない!」。中島さんはその一心で、直売の日は深夜2時ぐらいから仲間と作業を始め、1尾ずつ丁寧に処理しています。
新鮮で臭みがなく骨はほとんど取り除いているため、これまで魚嫌いだった人も「美味しい」とパクパク食べてくれるんだそうですよ。
名物「フグのたたき」
この直売所で一番人気なのが「フグのたたき」です。フグも未利用魚の一つで、冬場はシマフグがたくさん網にかかるそう。中島さんはフグも提供できるようにと、昨年フグ処理資格者の免許を取得しました。
表面は香ばしく、中はふわっと柔らかく。新鮮だからこそ甘味も際立ちます。この「フグのたたき」がお目当てのリピーターも多く、開店早々売り切れてしまうことも。食べたい方はどうぞお早めに!
干物のレシピ作りに挑戦中
中島さんは今、安宅産の未利用魚を使った干物を開発しています。骨なしの干物や、出汁用の干物、そしてさまざまな味付けをした干物など。昆布茶味やお醤油味、ワサビ味など、いろんな風味を試しているそうですよ。
干物も臭みをなくすために、下処理を丁寧にするほか、漬け込む液は使い回しをせず一回ずつ使うのもこだわり。天気や湿度を見極め乾燥時間を調整します。
軽く炙っておつまみ感覚で食べられる、干物らしくない干物を目指しているそうです。完成したら県外にも発送できるようにして、小松の魚をどんどん売り出していきたいとのこと。直売所の進化が楽しみです!
漁師であり料理人でもある中島さんに、小松について伺ってみました。
Q.小松の印象は?
空港もあるし、新幹線もあるし、高速道路のインターもあるし、いろんなところからアクセスしやすい便利な場所。しかも安宅漁港は全部に近くて、とてもいい立地なんです。小松の便利さを活かして何かを仕掛けたら、すごい人を呼び込めそうだなと思います。
Q. 小松でよく行く場所はありますか?
やっぱり海ですね(笑)。朝焼けや夕焼けの景色は最高です。小松は空の色がとても綺麗だなと思います。
それから、山にもよく行きます。水汲みによく行っていたんですが、場所によって味わいが違って面白いですよ。大杉町の水は苦めで、那谷町の山手にある「生雲」は甘い。いろんなところに名水があって、飲み比べて楽しんでいます。
Q. 中島さんの夢はなんですか?
たくさんの人に魚の美味しさを知ってほしいです。そうすれば、もっと魚の消費量も増えて、漁師もやりがいのある仕事ができると思うんです。だから美味しく手軽に食べられる加工品を作って広めたい。
魚をめぐるいい循環ができて、漁師になりたいという若者が増えたら嬉しいですね。安宅漁港の魅力をどんどん発信して、港に活気を呼び込みたいです。
Q. 小松は中島さんにとってどんなまちですか?
「住むのにいいまち」ですね。地元を出る時に、海があって山があって、そんなに賑やかしくないところに住みたいなと思っていました。住んでみると、期待通りの場所でした。
自然が豊かで空気がいいし、都会みたいにざわざわしていないし。周りも温かく迎え入れてくれて、昔からここにいたような居心地のよさがあるまちです。
(取材は2024年11月)